繊毛虫のアニメ批評ブログ

簡潔な作品論を定期的に投稿します。

『ゾンビランドサガ』:世界の創造

放送期間:2018年10月-12月、全12話

制作:MAPPA

監督:境宗久

 

何のために生きるのか? 現実のアイドルは、まあ最近ではSNSとかあるが、私生活を衣装と化粧で塗り込めてアイドルとなる。それに対してフランシュシュのメンバーは、死を死化粧に塗り込めてステージに立つ。それは生者でも潜在的に有している、生の根元的な空無(=さが・性質・宿命)であり、私たちはファルス的享楽や剰余享楽を通してその空無と間接的に関わることで世界の仕組みを肯定しながら、というよりそれに従いながら生きているが(cf.『夜戦と永遠』pp. 141-237)、さくらたちはその埋めることが不可能な空無をまっすぐ見据え、死化粧でそれを縁取り、そこに笑顔と歌と踊りを重ねていく。ファンと視聴者はその、象徴的秩序から逸脱する女性のエクリチュール、神の享楽に巻き込まれていき、世界の仕組みに従わずに新たな世界を創造していく契機を得る。ただし、そうした創造は抽象的などこかではなく、個々人の生活と思いが根付く具体的な場所、本作であればさくらに希望を託した巽の思いが根付く佐賀から始まる。